あるにもあらず 過ぐるわが身は

東欧・北欧・中近東など世界の60's Beat/Psych、その合間にコミックなどを紹介しています。 こっそりとやっていますので、こっそりとお越し下さいませ(笑 

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最強ラインナップです
Atlantis 1969 :(左から時計回りに)Petr・Vladimír・Ivo・Jaroslav・Stanislav・Hana


今回は以前から紹介したかったチェコスロバキアのポップなビート/サイケグループAtlantisです。
資料を翻訳するのと、流れを整理するのに手間取ってしまって、完成させるのに時間がかかってしまいました。

Atlantisは、63年にAleš Sigmundがブルノで結成したVulkánから派生したグループで、ここではAtlantisのキーマンであるPetr & Hana Ulrychovi兄妹がVulkánに加入した64年から、Atlantisが単独のグループとして活動していた70年までの範囲で話を進めて行きます。

共産主義のこの国で安定した生活をするために軍人に…、という父親の意向でブルノの航空士官学校で学びながらも、音楽で身を立てようとブルノ音楽院で作曲を学んでいたPetr Ulrychoviは、64年、6歳下の妹のHana UlrychovaとともにVulkánに加入。
Vulkánはポップ・ミュージックにモラビアン・フォークの要素を取り込んだグループで、当時はまだレコードはリリースしていなかったものの、ブルノではかなり人気があったようです。
Petrの父親はVulkánでの活動を快く思わなかったようで、リーダーのAlešに「音楽をあきらめて軍人として身を立てるよう説得して欲しい」という手紙まで送っていたようです。
Alešは優れたソングライターでリードボーカリストでもあるPetrを手放す気はさらさらなかったのでどスルーしたようですが、父親の気持ちを無下にはできなかったPetrは、グループ活動をしながらも改めて航空士官学校でちゃんと学位を取って、軍人としての道をちらつかせて説得してしまったそうです。
もちろん、軍人になるつもりはなかったそうですが(笑

その件が片付いたかと思いきや66年、今度はリーダーのAlešが兵役に取られてしまい、リーダーを欠いたVulkánは活動停止を余儀なくされてしまいました。
相談の結果、残されたメンバーは別名義のグループで活動していくことになりました。

それがAtlantisでした。

初期メンバーはHana(Vo) & Petr(Vo)兄妹に、Stanislav Regal(Key.G.Vo)・Jan Hubáček(B)・Zdeněk Kluka(Ds)の5人編成。

67年、Alešが兵役を終えて復帰、最終的に彼はVulkánを再始動させ、Atlantisは別個に活動することになりました。
ただ、少なくともAtlantisがレコードデビューするまでは繋がりは強かったようで、同年のVulkánのデビューシングルのレコーディングは、Hana & Petrがリードボーカルとしてフューチャーされ、Petrの楽曲が採用されています。

Atlantisは兄妹ボーカル、Vulkánは姉妹ボーカルをフューチャーしており、ポップな音楽性といい、この2つのグループは奇しくも共通した面が多いのも面白いところです。

同年、HanaがBluesmenに加入。
68年にAtlantisのデビューシングルのレコーディングが始まると復帰していることからして、おそらく一時的な参加だったようですが、Bluesmenでの活動でHanaのボーカルが高く評価され、Atlantisにとってもいい呼び水になったようです。

1stシングルのレコーディングの前にJanが脱退、Oldřich Fiala(G)・Jiří Svoboda(B)が加入。

68年3月にSupraphonから1stシングル「Jen O To Mi Nejde / Seď A Tiše Poslouchej」をリリース。
AtlantisはPetrの幅広いスタイルのソングライティングとHanaとのツインボーカル、時代の空気を反映させたサイケデリックな要素を持ったサウンドが持ち味でした。
リリースしたレコードは高く評価され、プラハの春の自由な空気も相まってグループは充実した時を過ごしますが、それも長くは続きませんでした。

68年8月21日、ワルシャワ条約機構軍がチェコスロバキア全域を占領した時、グループは西側へのツアーのためにブルノ空港にいたのですが、すでに軍に占拠されており足止めを食らっていました。
怒ったPetrはギターを抱えてブルノのラジオ局に飛び込み、占領への抗議としてプロテスト・ソング「Zachovejte(落ち着いて)」をライヴで歌ったそうです。

映像などでみると穏やかそうな印象のPetrですが、父親の件と言い非常に気骨を持った人ですね。

穏やかそうですが

68年12月、相変わらず戦車がひしめく緊張したプラハで、2nd Czechoslovak Beat Festivalが開催され、Atlantisも出演しました。

69年に入って、ブルノのラジオ局でのPetrの勇敢な行動が、メディアへの検閲が復活した後に当局で槍玉に上がり、長い期間ラジオでの仕事を禁止された上、グループの活動も危機に追い込まれました。

しかし、捨てる神あれば拾う神あり。
地元ブルノのオケ、Orchestrem Gustava Bromaが手を差し伸べ、Atlantis自体をオケの一員として採用することで、引き続き活動を続けることが可能になりました。

また、この件でのゴタゴタでZdeněkとOldřichが脱退、68年いっぱいでBluesmenを脱退したJaroslav Vraštil(Key)とVladimír Grunt(Ds)が加入、Stanislavはギター専任にシフトして、さらに69年初頭のレコーディング後にJiříが脱退し、Ivo Křižan(B.Vo)が加入、Atlantis史上最強の凄腕揃いのラインナップになります。

ラジオ局での件で活動に制限があったとは言え、69~70年のAtlantisは結果的に充実した活動と創作上のピーク迎えることになりました。

一つはOlympic・Prudy・Synkopy 61らとともに「Cesta, která vede nikam」の撮影に参加、「Don't You Break It Again」などの素晴らしい楽曲を提供しています。

もう一つはホメロスの叙事詩を元にPetrが全曲を作詞作曲し、Orchestrem Gustava Bromaとともに制作したチェコスロバキア初の単一主題のポップアルバム「Odyssea」。

ジャケがちょっと怖い(笑
Odyssea(CD)

しかし、両作ともシュールで難解な内容だったためか、頭の固い当局の連中が理解できず、首を縦に振らせることができなかったようで、両作とも90年代までお蔵入りになってしまいました。
両作ともせめて68年のうちに制作されていれば、当時のリリースの可能性もまだあったと思うのですが、69年だとすでに検閲が再び厳しくなっていたので、制作のタイミングが良くなかったと言えます。
たぶん製作の段階でそんな予感はしていたとは思うのですが、それでも初志貫徹で完成させて残されたことは非常に意義高かったと思います。

「Odyssea」自体が陽の目を見たのは民主化後の90年になってからですが、いくつかの収録曲はオムニバスなどに収録されたり、TV用のクリップなどが制作されています。

70年になると、グループとしてのAtlantisの活動はほとんどなくなり、Hana & Petrのバックバンドのような存在になって行き、メンバーもかなり流動的になって行きました。
名義上のAtlantisは74年まで続いていますが、グループ単体での活動は70年初頭までで終わりを告げたと言えます。

チェコスロバキアのグループの中ではちょっと地味で小粒な印象ですが、ポップで良質な楽曲を最高の演奏で聴かせてくれる、個人的には外せないグループですね。







Atlantisは、68~70年の間に限定すると、以下の通り9枚のシングルとアルバム「Odyssea」(当時未発表)、そしてオムニバスLPのみに収録の曲が1曲、未発表曲?が1曲あります。
指定のないものは全てSupraphonからのリリースで、当時のドラマーだったZdeněk Kluka作の6、Creamのカバー8以外は全てPetr Ulrychovi作です。
 

Singles(1枚はVulkánとのスプリット盤で重複曲なので省略)

1,Jen O To Mi Nejde / 2,Seď A Tiše Poslouchej `68
3,Dlouhý Stín / 4,Král Umírá `68
5,Wine Or Love / 6,Pig Headed Mona `68
7,Krizova Cesta / 8,Strange Brew `69
9,Nechod Do Klastera/10,You Don't Love Me Anymore `69
11,Nonsens / 12,V Poslední Době `69 *Discant
13,Vůně / 14,Don't You Break It Again `70
15,Brána Milenců / 16,Nikdy Nebudu Tvá `70

オムニバスのみの曲

17,The Time In Abore(13の英語バージョン)

未発表曲?
18,Zamávej(詳細不明 99年のBonton編集盤に収録)

アルバム
Odyssea(当時未リリース、90年に初リリース)

68年の初期ラインナップでの楽曲は、当時のチェコスロバキアのグループらしい、単純にアレンジでサイケにしただけではない、メロディ自体にオリエンタルな要素のあるユニークかつポップなもので、Petrのソングライティングのレベルの高さを垣間見ることができます。
また、68年の曲ではファズを多用しており、ポップ系のグループにはもったいないほどの演奏力も相まって侮れません。
ハープシコードを前面に出したポップな2、バリバリにサイケデリックな3&4が聴き所でしょうか。
未発表曲?の18は、サウンドからすると68年の録音のような気がします。

ラインナップが大きく変わった69年からは、Hanaが単独でリードを取る曲が多くなり、それに伴なってかポップな傾向が強くなりますが、Hanaのフォーキーさとソウルっぽさを合わせ持ったボーカルは魅力的で、ストロングな演奏も相まって何気に重さのあるポップに仕上がっています。
2とともに最も有名な、兄妹の掛け合いボーカルがさわやかな9、前述のラジオ局での件でSupraphonでのリリースを禁止されたためか、ちょうど同年に設立されたDiscantからリリースされた、どこか当局への皮肉を感じさせるノベルティな曲調の11&12、兄妹の掛け合いボーカルが愛らしいロマンティックな佳曲13、Hanaのボーカル&弾きまくりのベース&オルガンがグルーヴィーなR&B14、憂いを感じさせるHanaのボーカルと荘厳なオルガンが美しい15など、68年とは違った魅力を感じさせる曲が多いです。
ちなみに、オムニバス収録の17は13の英語バージョンで、バッキングトラックは同じようですが、ボーカルアレンジが違います。

そして「Odyssea」収録曲ですが、前述のとおりシュールかつ演劇的な作風のため、ビート/サイケの範疇で聴くと結構辛いものがありますが、J.Airplaneの「White Rabbit」を演劇的にしたようなアレンジの、フェデリコ・フェリーニの映画のような退廃的な匂いがたまらない「Ticho」や、アルバムのラストを締めくくるしっとりとした終末感が美しい「Za Vodou,Za Horou」は一聴の価値ありです。

70年以後はHana & Petrのデュオ名義での活動になって行き、Atlantisをバックにレコーディングしていないものもあるため、あまりにもややこしくなるので今回は割愛しますが、デュオ名義の作品にも紹介したいものがあるので、いずれまた…。

そして収録CDですが、基本的には「Odyssea」も含めて全曲CD化されています。
しかし、廃盤になったものはあまりにも入手が難しく、僕自身もまだ入手できていないものが多い(音源は持っていますが)ので、比較的入手がしやすい以下の2種を紹介するにとどめておきます。

a361.jpg

A) Hana A Petr Ulrychovi / Písně(チェコSupraphon SU5580-2)`05 2CD
1~3、9・13収録
B) Hana Ulrychova / (Nejen)Tichý Hlas(〃 SU5770-2)`06 2CD
8・14・15&「Ticho」収録

2CD2種で9曲しか聴けないというのは正直あまりにも効率が悪いのですが、現状ではこれ以外は入手が難しすぎるので…。
ただ、2CDとは言え、直接本国で通販すれば結構安いです。

ちなみに、A)にはVulkánの67年の1stシングルのAB面が、B)にはBluesmenの68年のEPから「Nevidomá Dívka」が収録されています。

AtlantisだけでまとめたコンプCDを出して欲しいなあ(笑



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